七位連一 『地を駆ける虹』 (MF文庫J)

地を駆ける虹 (MF文庫J)

地を駆ける虹 (MF文庫J)

友人たちと懸賞首狩りを営むネイヴはメンバーの中でただひとり,エレメントの孵っていない「雌鶏」だった.第 3 回 MF文庫J ライトノベル新人賞佳作受賞作のダークファンタジー.
物語のトーンは全体を通して重く暗い.名前をつけられたキャラクターが容赦なく死んでいくのはこの手のファンタジーでは珍しいかも.特筆すべきは英雄に憧れつつも自分の無能力に悩む主人公の姿.力は無い,文句は言う,特別な努力はしない,かといって特別怠け者というわけではない,仕事に手を抜いたりもしない,生活するのにそんな余裕は無い,出口は見つからない.結果としてもやもやを抱えたまま,打破する手段も見つからないまま日々を生きている.なんとなくいやぁ〜な共感を抱いてしまうのは私だけではないと思いたい.あとがきやフライヤーを読んだ感じ,作者も疲れた日常の中でこれを書いたのかな,と思える節がある.決して楽しい話ではなくてひとにすすめるのも躊躇われるのになんとなく無碍にもできない.てな小説.