竹宮ゆゆこ 『とらドラ9!』 (電撃文庫)

とらドラ!〈9〉 (電撃文庫)

とらドラ!〈9〉 (電撃文庫)

「意地はってんじゃねえよ」
「意地なんか。……意地なんか、もう、とっくに粉々」

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意に染まぬ形で大河の気持ちを聞いてしまった竜児.修学スキー旅行からバレンタイン前,高校三年への進級も控えた悩み多き時期.それぞれに抱えた分かりにくい想いを吐き出しつつぶつかりつ,転機を迎える.そして暗転.
脳天気な言動で真意が酌み取りにくかった実乃梨も,狂言回しのような立ち回りをしていた亜美も,言葉に気持ちを出してしまえばその悩みは割とありふれた平凡なものにさえ見える.それがこの上なく愛おしく思える.頼りないようで強かな大人と,ナイーヴで無力な子どもの構図がまたひとつ強化された印象.恋愛云々よりそういう対比がより眩しく映るのは私が年を食ったから,なのかねぇ.私がおっさんにな〜っても つっても大人たちだってどうせそんな難しいこと考えちゃいないんだぜ.言葉として書き出しちゃえば単純でありふれた,子どもたちと変わらないレベルの悩みだったり.そんな気持ちを隠したりちらつかせたり,ゆゆこ先生は焦らせ上手なお方であることよ.部屋の掃除はいい,早く続きを書く作業に戻るんだ.