犬村小六 『とある飛空士への恋歌』 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)

先行きが安穏としたものでないことがわかっているのに、なぜか胸がわくわくしてくる。根拠も理屈も展望もなにもないまま、ただ希望だけが能天気に膨らんでゆく。
この先になにが待ち受けているのだろう。
どんな楽しさが、どんな悲しさが、喜びが、苦しみが、この胸のうちに舞い降りてくるのだろう。いまの自分では予想することもできない、名前もわからないいっぱいの感情が溢れてきて、それに押し流されてしまったりして。絵本の登場人物みたいな素敵な経験をたくさんして、素敵な人たちに出会って、仲良くなって、けんかをして、泣いたり笑ったり怒ったりしながら、よりよい未来を求めて生きていく。そう考えるだけで、アリエルはたまらなく楽しくなってくる。早く明日が来て欲しいと、無意識のうちに強く願う。

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六年前の革命によって皇政から共和制へと移行したバレステロス共和国だったが,その政体はすでに軋みはじめていた.そんななかで計画されたのは,「空飛ぶ島」イスラを利用して「空の果て」を目指す遠征の旅.革命の折に飛空機械整備工のもとへ引き取られ密かに生き延びていた元皇子のカルエルは,様々な思惑のもとで遠征隊に参加することになった.「旅立ちなんかじゃない、これはきれいに飾り立てられた追放劇だ。」…….
『とある飛空士への追憶』と世界観を共有する物語.悲劇の皇子と町娘と処女王と空をめぐる青春物語.作者曰く「ヘタレマザコンナルシストの空飛ぶ青春」.良かったー.世界観を過不足無く説明した,壮大な物語の幕開けを予感させるプロローグも,暖かみのあるキャラクターとともに描かれる慎ましやかで楽しい生活も良かった.ベタといえばベタなんだけど,引用部分みたいに照れも衒いもなく語られるあけすけな高揚感には読んでるこちらも素直にわくわくさせられてしまう.こういうの私大好きだ.ってか私もお姉ちゃんたちにむぎゅーっと挟まれたい.
面白かったです.続きを楽しみにしてます.