小林めぐみ 『星屑エンプレス ぼくがペットになった理由』 (富士見ミステリー文庫)

一世一代の覚悟で愛しのケイマリリへのプロポーズを決行しようとした帝国犯罪捜査局訓練学校の生徒・千高知はその当日,空から落ちてきた謎の物体に踏み潰されて死亡.その 30 分後,全身サイボーグとして生まれ変わることとなる.彼を踏み潰したのは銀河皇帝の唯一の後継者ナオシスタ皇女だった.
宇宙のどこかの星で起こった事件を,身分を隠した皇女とお供がドタバタしながら見事解決.「コミカルスペース漫遊記」のアオリがまさにピッタリのお気楽珍道中.多種多様の宇宙人やテクノロジーを描きながらも話の本質に大きく関わっているわけではないので,並行してリリースされていた『食卓にビールを』と比べると SF 色はかなり薄い.まあ本来は「ミステリー」文庫ですから.ちょっとした仕掛けを用意しつついつも通りの軽妙なテキストで気楽に読める,さすがに上手いなあ,と.個人的には話のキーのひとつ,「大いなる力」の正体をラストであっさりと明かしてしまったのがちと不満ではあった.その気になればいくらでも生かしようがある(旧来からよく使われる)ガジェットなだけに,せめてもうちょっと盛り上げるか引っ張るかしないともったいなかったんじゃないかという気がした.