- 作者: トム・ロブスミス,Tom Rob Smith,田口俊樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/08/28
- メディア: 文庫
- 購入: 30人 クリック: 1,008回
- この商品を含むブログ (225件) を見る
- 作者: トム・ロブスミス,Tom Rob Smith,田口俊樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/08/28
- メディア: 文庫
- 購入: 23人 クリック: 52回
- この商品を含むブログ (186件) を見る
"犯罪者が存在するはずのないユートピア"であるところのソビエトで起こる連続殺人.上巻では発端の事件と,1950 年代のソビエトの恐怖政治の姿をこれでもかと,下巻では事件の真相を描く.ソビエト社会のディテールは理不尽な死と貧困と疑心暗鬼で凝り固まったもので,息苦しいだ窮屈だ,というレベルを完全に通り越していた.倒すべき明確な敵の見えないディストピアはなんとも読んでて憂鬱にさせられる.チカチーロに着想を得たという事件のあらましと,ソビエト恐怖政治の組み合わせも上手かった.しかし話,というか事件は尻すぼみだったかなあ.レオたちが真相に近づくに連れ,話のほうからは徐々に得体の知れない不気味さが抜けていった.確かな形と動機を持った異常殺人者より,主体の見えない恐怖政治のほうがずっと恐ろしく,ずっと気ちがいじみていたのだもの.ライバルの嫁のパンツのにおいを嗅ぐワシーリーがいかに正常で小物じみていたことか.