彩坂美月 『未成年儀式』 (富士見書房)

未成年儀式 (Style‐F)

未成年儀式 (Style‐F)

地方都市の丘の上に建てられた光陵学院の女子寮.死んだ女子生徒が現れるという噂のある女子寮に,夏休みに残ったのは 5 人の少女.そこへ駆け込んできたのは殺人を目撃したという双子の姉妹.
女子寮に閉じ込められた 7 人の少女に降りかかるさまざまな出来事.パニックホラーのような,ミステリのような,青春群像劇.時間とともに視点焦点を次々と変えて,パニックのなかで少女たちの過去と現在を掘り起こしていく.パニックホラーの手段としては常套だと思うんだけど,全員が何かしらの影を抱えた少女とあって,下世話な興味と得も言われぬ気持ち悪さが同居したまま,読ませられてしまう.等身大の鬱屈というか,なんかそんな感じのものがひどく実直に表現されていたと思う.
第七回富士見ヤングミステリー大賞準入選のこれがデビュー作.ってことは富士ミスの遺児てことになるのかな.「作者自身、何を書いていいのか迷っているように見える」という選評が読んでみてすごくよく分かった.良かったです.