岩城裕明 『ようこそ、ロバの目の世界へ。』 (講談社BOX)

ようこそ、ロバの目の世界へ。 (講談社BOX)

ようこそ、ロバの目の世界へ。 (講談社BOX)

「えぇ!」僕は自然と声を上げた。「なに泣いてるんですか!?」
「僕はね。知らなかったんだよ。これ程までに、料理という行為が、神々しい行い、だったなんて」先生は言葉を細かく区切りながら言った。それから両手を広げて「これでは、まるで私は救世主のようではないか」と言った。
「はぁ?」

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"ロバの目"を持ち,普通のひとには見えないものが見える,普通の小学四年生の男の子・スバルの夏休み.
第 6 回流水大賞優秀賞受賞作.ちとシュールな普通の日常のお話.クラスのマドンナにどきどきしたり,エアコンのある友人の家を求めてさまよい歩いたり,冷え切っていた両親がついに離婚したり,無駄にした食材の供養と称して先生と鍋作ったりするだけの,小学生男子の夏休みが描かれる."ロバの目"だ「見えないものが見える」だといってもそれ自体は大筋にたいした意味を持たない.干渉するでもなく,益/害を受ける/及ぼすでもない,日常風景の一部にあるとしか言えないもの.ユーモラスで変な日常のおかしさは万城目学に通じるものがあった(異論もありそうだが).ここ何ヶ月か平均的ライトノベルが続いていた講談社 BOX 新人賞受賞作では間違いなく出色だと思う.良かったです.