新城カズマ 『さよなら、ジンジャー・エンジェル』 (双葉社)

さよなら、ジンジャー・エンジェル

さよなら、ジンジャー・エンジェル

実は、記憶は確かじゃない。
でも悲しみだけは憶えている。はっきりと。悲しみ、そして恐怖。
私がここに居るのだという恐怖。

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想像、記憶、思考。
それらのあいだに、差異は存在しなかった。

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本好きの女の子,結城継美は,大学進学を機に青梅街道沿いの本屋で念願だったアルバイトを始めた.生者と交わることの出来ない世界,〈シキイ〉の住人である馬橋南署勤務の元巡査,泊司郎は継美の姿を見守り続ける.
女子大生継美と,死者の国にいる司郎の交互の一人称で語られる,少し不思議な物語.すぐそばにある不思議をあるがまま,まとまりなく描いた物語,といった感じ.世界観は『15×24』と地続き(あの人気キャラクターが再登場するよ).『15×24』は始まりと結末だけをまず決めて,経路は決めずに書き始めたと聞いたけど,これも同じ方法を使ったのかな.ふたりの関係はひとつの解決を見るけれど,まだまだ物語は続くぜ,的な読後感が似ている.時間が存在せず,日常と負の形でしか関わることの出来ない〈シキイ〉の住人たちの思考や行動も興味深い.スターシステムに加えて,架空言語Twitter がキーアイテムとして使われるなど,作者のエッセンスは余す所なく詰まっているので,はじめての新城カズマとして読むにも向いているのではないでしょうか.