志瑞祐 『白銀の城姫2』 (MF文庫J)

いつも自分は〈城〉だなんて言っているけれど。シャトレアはきっと、彼女自身が思っているよりもずっと、普通の女の子なんだと思う。

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〈城姫〉とは建造物に宿るという伝説のような存在.宿るべき城を持たない放浪の城姫シャトレアに出会った建築士リンツは,姿をくらました師マイスター・ストランゼンを探す旅に出る.師の足跡を求め立ち寄った戴冠都市ランスは,折しもオルレアンの乙女ジャンヌ=ダルクを記念した祭の最中だった.
実在の建造物をモチーフとした名を持つ〈城姫〉たちを中心とした中世風ファンタジー.城を擬人化した,強大な力を持った女の子とともに,運命に立ち向かう少年.なんと男の子好きするストーリーであることかっ.“神に愛されし御手ハンド・オブ・ミケランジェロ”を持つ天才彫刻師にして殺人鬼マルキア=ギイの狂気を,ジャンヌ=ダルクとジル・ド・レイをめぐる(有名な)狂気に絡めたストーリーテリングは非常に上手い.キャラクターも上手く,特に自分は〈城〉であると言い張りながら,事あるごとに女の子らしいところが強調されるシャト子さんの可愛らしいこと.
架空の世界を舞台にしながら,一部の地名や人名,建造物の名前は実在のものをそのまま用いているのは改変歴史ものを意識しているのかなーとも思ったけどよく分からない.既存の話からおいしいところを選んで,作者の世界に取り込んでいる,つう見方のほうが正しいかな.このチョイスがこれまた絶妙,ここまでストーリーにぶれはなく,安心して読める.てことで良かったです.続きも楽しみにしております.