大西科学 『晴れた空にくじら2 戦空の魔女』 (GA文庫)

この娘は、いつもそうだな。
クニを見ていると、なにかいつも、剣を構えてこちらをうかがっているような、そんな気がする。近づいたら斬る、と隙を見せないように気を張っている。最初の出会いがそうだったからそう思うのだろう、と雪平は考えるが、どうもある意味では、その頃からなにも変わっていないような気もするのだ。

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明治 37 年,日本はロシアと交戦状態にあった.召集令状を受け取った雪平は,槍次,クニと共に日本鯨軍に組み入れられ,浮船《峰越》に再び乗り込むことになる.さらに新たな乗組員を迎えた《峰越》は,日本海上空で謀鳥任務につく.
「浮鯨」の存在がキーとなる戦争の物語,シリーズ二巻.戦場の緊張感と,戦記物にはありえない変な緩さが同居しており,非常に独特の空気がある.雪平をはじめとしたキャラクターたちが,浮世離れした思考を持ちながら,大人の落ち着きも併せ持っているのがこの妙な味に一役買っているのだと思う.鯨軍という変な(架空の)軍隊が中心にあるから……というわけではないと思うのだけど,架空世界を形作っている各種情報の出し方が上手いのもあるのかな.一般的な空戦と少し違う,浮船の戦闘描写も面白かった.まあミリタリも架空歴史についてもよく知らない私の感想なので,どんだけではありますがっ.