秋口ぎぐる 『いつか、勇者だった少年』 (朝日ノベルズ)

いつか、勇者だった少年 (朝日ノベルズ)

いつか、勇者だった少年 (朝日ノベルズ)

現実だとわかっていた。でも現実感はなかった。
だからこそすばらしい。僕はこういう感覚を待っていたのだ。

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隼人は昔,異世界から召喚され,同じ境遇の同世代の仲間たちと共に戦った勇者だった.「非日常」より「日常」へ戻ってきてから二年.隼人は,かつての仲間のひとりだった一浩が死んだことをニュースで知る.一浩を殺したのは,異世界から現れた復讐者だった.
退屈極まりない日常を嫌い,かつて経験した「非日常」を渇望する少年のとった行動とは.やー,面白かった.隣り合った日常と非日常という王道の舞台立てで,己のエゴと自尊心のためだけに行動する少年をゴリゴリと描き出す,「ありきたりではない物語」.一皮剥くと非常に分かりやすくなる主人公の行動原理にはまったく共感できない.といいながら,「ありきたり」と決定的に違うのは実はラストくらいではないかという気もする.このアプローチは面白い.「アンチ・ライトノベル・ヒーロー」という呼び方はちと気に入らないけど.おそらく作者の狙い通りでしょうが,なんとも気持ち悪い読み物でありました.