- 作者: フェリクス J.パルマ,宮崎真紀
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/10/08
- メディア: 文庫
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親愛なる読者のみなさま、さあ、どうぞ! 一度ページをめくりはじめたら止まらない、この魅惑の物語をたっぷりお楽しみあれ。夢にも見たことがないような冒険の数々に必ずや出会えるはずです!
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舞台は 19 世紀末のイギリス・ロンドン.恋人となった娼婦を,8 年前に切り裂きジャックに殺されてから,実業家の次男アンドリューは絶望の底に沈んでいた.いよいよ自らの命を絶とうと,ホワイトチャペルのかつての住居を訪れたアンドリューのもとに駆けつけたのは従兄弟のチャールズが持ってきたのは,マリー時間旅行社の広告だった.「ついに時間の流れに乗って、四次元空間を旅することができるようになりました。私たちの提供するツアーに参加して、西暦二〇〇〇年に行ってみませんか?」…….
『タイム・マシン』を発表して間もない時期の H・G・ウエルズを中心に,タイムトラベルをめぐる人々の悲喜こもごもを描く.作中,時間や人間関係を織物に例える段があるのだけど,これがまさにそれ.つづれ織りになっているほらからほらへ,これはどういうことなのか,どれがホントでどれがウソかと読んでいくうちに,いつの間にか物語に巻き込まれていた.読者への語りかけとなっている地の文もすごく効いている.突っ込んだ感想を書くと即ネタバレになりそうなのがもどかしい.
ウエルズをはじめとした実在の人物(ブラム・ストーカー,ヘンリー・ジェイムズなどなど……)の総じてどこか抜けた感じや,人類と機械人形が最終戦争の真っ最中にある西暦 2000 年の未来など,ユーモアたっぷり満遍なしでまったく飽きない.第一部の終盤まではどうかなと思ったものの,それ以降は最後までノンストップ.素晴らしい作品でした.