遠藤徹 『戦争大臣 I 嘲笑する虐殺者(ニーズヘッグ)』 (角川ホラー文庫)

さあ、世界に五年の猶予を与えよう。われわれにひれ伏し、死をもって謝罪する日までの猶予を。
それゆえ、諸君、今新しい元号を打ちたてようではないか。
この元号を、世界に知らしめようではないか。
すなわち、殲滅歴五年である」

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突如発生した死の疫病,ツイスト&シャウトにより,世界は混乱に見舞われた.二大国モビィ・ディックとグレンデルは,経済的脅威となっていた極東の島国を隔離地区に指定した.かくして国家J は国家としての機能を全て剥奪され,地球儀から抹消された.それから数年.戦争大臣シドにより再建された国家J は,世界への復讐を開始する.
広江礼威のカバーイラストがむちゃくちゃカッコいい「最強ダークファンタジー」.セーラー服を着た七人の少女暗殺者と,詰襟の軍服姿で見目麗しい戦争大臣の演説で掴みはオッケー.世界各地で繰り広げられる異能者たちによる虐殺と,扇動する戦争大臣のカリスマ性が繰り返し描かれる.イデオロギーや経済格差がテーマになるのかなと,プロローグを読んだ時点で思ったのだけど,本編からは政治色はほとんどない.むしろ物語は(明らかにおかしなことを抱えながら)非常に分かりやすく,リーダビリティの高さもあってすいすい読み進む.といっても,書いてあることを鵜呑みにしちゃいかんこともほのめかしているので,どう転んでいくのかはよく分からない.隔月でのシリーズ化も決まっているらしいので,追いかけてみようかなと.