元長柾木 『星海大戦』 (星海社FICTIONS)

星海大戦 (星海社FICTIONS)

星海大戦 (星海社FICTIONS)

「……戦場で何かあったか?」
「何もありません、戦場には。つまらない、殺伐とした、荒涼とした、不毛な死、それだけです」

Amazon CAPTCHA

人類が宇宙進出を果たしてからおよそ 400 年.その過程においていくつかの戦争を経験した人類は,今では土星(クラスタ)木星ユニオンという二大勢力に分かれ,終わりの見えない対立関係を続けていた.
土星軍艦隊司令,九重有嗣.木星軍新造艦ヴィレッジグリーン機関長,クラウディオ・チェルヴォ.ヴィレッジグリーン艦長,マクシミリアン・ルメルシェ.主にこの三人によって描かれるスペース・オペラ.序章で重要な基本設定(ファースト・コンタクトやノウアスフィアの発見)を一気に説明し,その後の各章ではそれぞれに視点を移しつつの群像劇にスライドする.儀礼と化しつつある戦争の姿を変えようとする司令官,いがみ合うふたりの天才,「歴史を経営する」と豪語する起業家.ストーリー運びそのものはかなり手堅い,という点は星海社FICTIONS の他二冊と共通している.今巻では導入部が終わっただけのようなので,どう転ぶかはこれからかな.仕掛けはいっぱい用意してそうだし,悪くはなさそう.
帯やカバー,あとがきでは「SF」であることをかなり強調しているのだけど,しかし今のところの面白さは SF としての面白さとは別の面白さだと思う.それだけに,本編を読んだあとにあとがきを読むと一層なんとも言えない気分になるのよな.