深見真 『疾走する思春期のパラベラム 君に愛を、心に銃を』 (ファミ通文庫)

もう、すべては終わったのだ。
二人に空から死が近づいてくる。
三人の強力な乾燥者。乾燥者たちは、これがこの地球で最後の殺人だとわかっている。
無抵抗のまま、少年と少女の短い一生が終わる。人類の歴史とともに。

Amazon CAPTCHA

金剛は「ああ」とうなずき、
「戦争が起きてよかった。戦争で死ねてよかった。せっかく軍人になったのに、一度も戦わずに死ぬなんて耐えられなかった。乾燥者との戦争が始まって、本当に本当に……よかった」金剛は恍惚とした表情で続ける。「人類のために戦って死ぬなんて……最高すぎて勃起してくる」
「そんなに興奮してるんなら、フェラして抜いてあげましょうか?」

Amazon CAPTCHA

人類の天敵,乾燥者(デシケーター)との最終戦争は最終局面をむかえていた.最強の P・V・F,アンフォーギブン・バリスタを手に入れた一兎は宇宙の真の姿を目の当たりにし,選択をすることになる.
シリーズ完結.「思春期はいつか必ず終わり、少年少女は大人になっていく」.この宇宙だって一〇の三〇乗年後には消える.それでも「みんな大好きな戦争」は続いていく,という.最後の戦い,次々倒れていく仲間,追い詰められた人類の最終兵器,というまさに最終回らしい怒涛の展開.その裏で描かれる宇宙の終焉.一兎の視点(とレーベル)に合わせて,非常にざっくりしたものではあるけど,ビッグクランチが描かれるライトノベルはそうはないよな.そのうえで,全宇宙ではなく周囲のひとたちを守りたいという一兎の選択は,いかにもライトノベルらしい理由ではあるけれど十分な説得力がある.
「殺し合うことは決して異常なことではない」という戦争観が披露されて,それでもほのかな希望が残るラストに不思議な余韻がある.素晴らしいフィナーレだと思いました.
以下は蛇足.今回の最終巻を読んで,いつか作者の SF も読んでみたいなあと思った.安直な発想かもしれないけど,描くものにしっかりした思想(というか嗜好というか)が出ているし,面白いものができそうな気がするんですよね.