早矢塚かつや 『名門校の女子生徒会長がアブドゥル=アルハザードのネクロノミコンを読んだら』 (一迅社文庫)

「不定形って……どんなかたちもとれるっていうことですか?」
「そう……この業界だとそう珍しいことじゃないから、慣れるようにね」
会長が《落とし子》と呼ばれたその巨大な怪物を見上げて「今回はいろいろひっつけてきたわねー」と感心した声をこぼす。
なんだか、とてもいやな業界だ……

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名門九頭竜学園の生徒会長・久東亜依.容姿端麗,スポーツ万能,学園中の憧れを集める彼女ですが,実は死霊秘法(ネクロノミコン)を所持していたのです.
学園に封印された九本の魔刀が呼び寄せる《外なる神々》(あうたぁ・ごっず)を,生徒会メンバーが死霊秘法(ネクロノミコン)とそれぞれの刀でもって退ける.一発ネタのタイトルが話題となった学園クトゥルフもの.タイトルは作者から提案したようなことを(去年本人から直接)聞きました.ストーリーは,こなれた感じの学園異能.各アイテムにクトゥルフ神話から取って漢字にした固有名詞を当てている.クトゥルフ神話にはまったく明るくないので見落としているネタがかなりあると思うのだけど,気にせずともサックリ読めるのはいいところ.まあぶっちゃけクトゥルフ神話である必要はまったくないし,それを言っちゃうとこの作品の存在意義自体がなくなってしまうのだけど.もう少し背景を掘り下げていればクトゥルフ×幕末の架空歴史ものになった……のかもしれないので,そういう意味では惜しい作品だった……,のかもしれない.