小林三六九 『クリスナーガ』 (電撃文庫)

クリスナーガ (電撃文庫)

クリスナーガ (電撃文庫)

「なあ、イヴ、聞いてもいいか?」
「ふふん? 言ってみろ」
「ぼくが存在したことに、意味はあったかな?」
「知るか」魔女はバッサリ切り捨てた。「答えなど求めてもいないくせに聞くな」

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気がつくとぼくは闇の中にいた.記憶喪失になっていたぼくは,クロムという名前を与えられ,黒い魔導書で召喚した魔女のイヴとともに,世界を揺るがす戦いに挑むことになる.
異世界クリスナーガを舞台にした魔法飛び交うライトファンタジー.いかにもな感じではじまるライトファンタジーなのだけど,記憶喪失になった主人公が自分の名前やルーツすべてを完全に忘れている(ほのめかすことすらない)というのはわりと珍しいのかもしれない.それがストーリーにうまく効いていた.自分の存在について思い悩むとか,すべての出来事が都合よく進行するという運命的お約束を,良い切り口で切り取っていると思うのよ.これが作者のデビュー作とのことで,他の作品も読んでみたいなーと思ったのだけど,今のところこの一作しか出してないのね.