森橋ビンゴ 『東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる』 (ファミ通文庫)

東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる (ファミ通文庫)

東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる (ファミ通文庫)

言葉のアヤと言うか、叙述トリックと言うか、「付き合う」という言葉をどうにかこうにかうまく操ってどうにか今の関係に持ってきたと言うか……とにかくはっきりしているのは、俺と東雲の関係が、そこらによくあるような彼氏彼女の始まりとは大きく異なる形で始まったという事だけだ。
しかしまあ、そんな悩みがあるだけ、昔よりは進歩したって事なのかもしれない。
何もかもにやる気のなかった 1 年前に比べれば、たぶん。きっと。

Amazon CAPTCHA

『東雲侑子は短編小説をあいしている』の続編.三並と東雲の関係の変化を飾らない静かなトーンでじりじりと語る,恋愛小説の二作目.前作と比べると,読んでてイラッとくる部分は(良くも悪くも)少なくなっている,かな? 作中作「いとしくにくい」や,兄とその恋人の関係,クラスメートとの関係をかぶせながら描かれる人物同士の距離感がなんだか非常に心地いい.「何もかも言葉で説明すればいいってもんじゃないだろう」というセリフや,傍から見るとやたらこっ恥ずかしくて面倒くさい恋人関係の修復とか,いかにも「人間」の物語なのだなあ,と.良いものでした.