山口優 『アルヴ・レズル ―機械仕掛けの妖精たち―』 (講談社BOX)

アルヴ・レズル―機械仕掛けの妖精たち― (講談社BOX)

アルヴ・レズル―機械仕掛けの妖精たち― (講談社BOX)

シンギュラリティ抹茶(限りなく遙かなるブルー)。定価、一九八円。
「それはいったい……」

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西暦2022年.ネット上で起こった大災害アーリー・ラプチャーによって,30万人の魂が失われた.高校生の礼望は,アーリー・ラプチャーの被害を受けた妹,詩希が住んでいた沖ノ鳥島メガフロートシティ(OMFC)に転校する.なんとか妹を取り戻すことが出来ないかという,あやふやな決意とともに妹のアパートを訪れた礼望は,妹の身体に宿った何者かに出会う.
第7回BOX-AiR新人賞受賞作.デビュー作は(現時点で)最後のSF新人賞となる第11回日本SF新人賞を受賞した『シンギュラリティ・コンクェスト 女神の誓約』(感想).大元を貫く思想と志向はデビュー当時から変わっていない印象.100万人が暮らすメガフロート,肉体代替プログラム,神経細胞型通信(ナーヴセラー・リンカー)ナノマシンとボディ・プールを利用したネットの海への没入,シンギュラリティ.キーワードとガジェットが散りばめられるのはいかにもSF,なのだけど,いまひとつストーリーと噛み合っている感じがしないのだよなあ.例えば,五感を使ったネット中の事故で魂が失われる,という現象は,現象だけ見れば(SF的に)非常に古典的なものだと思うのだけど,それに対する新しい知見があるわけではなくもやっと流される.これは一例だけど,全体的に用語に対するフォローというか解説というか,掘り下げがかなり弱いと感じた.そういう意味でストーリー以前に気になる部分が多かった,かなあ.