紫藤ケイ 『ロゥド・オブ・デュラハン2 不死の都と守護精霊』 (このライトノベルがすごい!文庫)

ロゥド・オブ・デュラハン2 不死の都と守護精霊 (このライトノベルがすごい! 文庫)

ロゥド・オブ・デュラハン2 不死の都と守護精霊 (このライトノベルがすごい! 文庫)

《擬するもの》を、マルグリットに手渡す。受け取りながら、少女は、確かな眼差しで、こちらを見上げて来ていた。
マルグリットの大きな瞳に、リィゼ自身の瞳が映る。
どちらの瞳にも、燃え立つような戦意と、凍えるような悲しみが宿っていた。

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「絶望すると死ぬ」死術を解く手がかりを求め,領都イスルへ向かったリィゼたち一行.イスルの砦には巨人が立ちはだかり,街へ向かうものを追い払っているという噂が立っていた.実際にたどり着いてみると,そこにいたのはひとりの少年.「この先は、地獄だ」「ここを通すわけにはいかない――おとなしく立ち去れ」.
このライトノベルがすごい!大賞受賞作の二巻.ライトノベルという枠でダークファンタジーを書きたいならこうやれ,という理想形ではないかこれは.シンプルなテキストなのに,風景・心情・アクションのすべてがしっかり際立っているのはこれまでどおり.不死の姫と精霊になった少年,というふたつの視点から描かれるそれぞれの悲壮な決意.それがもたらす結末.立場の違いによる命の軽重や,傭兵の生命観といったものをさらりと入れ込んで,世界に自然な深みをつけているのも上手いなあ.ストーリーだけ見ればシンプルだけど,非常に完成されている.
ということで良かったです.これを含め,デビューからの過去四作はいずれも短めの作品だったので,もっと長尺というか,長篇を読んでみたいなあ.クオリティ面でポスト冲方丁になれる可能性のある作家だと思うのですよね.