赤月カケヤ 『俺が生きる意味2 放課後のリゾルト』 (ガガガ文庫)

俺が生きる意味〈2〉放課後のリゾルト (ガガガ文庫)

俺が生きる意味〈2〉放課後のリゾルト (ガガガ文庫)

「いいえ」斗和は真面目な顔で首を振った。「誤解している人も多いですが、生物学の世界にも進化論の世界にも、“弱肉強食”という言葉も概念すらも存在しません」
「そうなの?」
「ええ。だから覆すまでもなく、そんな幻想に振り回される必要はないんです」

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見えない壁に囲まれ,人喰いの化け物が徘徊する学校に閉じ込められた斗和たち.まわりで次々と生徒たちが喰い殺されてゆくなか,不思議な能力に目覚める寧々音.一筋の希望を見た斗和たちは,化け物を相手に生きるための戦いを始める.
『俺が生きる意味1 放課後のストラグル』(感想)の後編.学園でのモンスターパニックものであることは変わらないんだけど,進化論や創造論,動物行動学などに折を見て触れるのがなんか不思議な味になっている.『キミとは致命的なズレがある』(感想)の「アインズヴァッハの門」を読んだときにも感じたものだけど,それ自体が目的ではない衒学趣味,っつうのか,そういうのがにじみ出ている気がする(これで伝わるのか).なぜひとは生きるのか,ヒトが一個の動物して生きるにはどうすればいいのかを,直接的な暴力と間接的な思想の面から意欲的に描いていると思う.
で,ラストなんだけど…….先が非常に気になるというか,正直これで終わられては困ってしまう.あとがきによると,どうもこの二巻まではプロローグらしく,三巻からが本番らしい.三巻が出るかどうかは,“「う」ではじまり、「りあげ」で終わる大人の事情”次第とのこと.ここまでの印象だと,まともに完結させようとしたらかなりの大長篇になるのではないか.皆も騙されたと思って買ってみるといい,そしていっしょに見極めてくれるといい.