大桑八代 『カクリヨの短い歌』 (ガガガ文庫)

カクリヨの短い歌 (ガガガ文庫)

カクリヨの短い歌 (ガガガ文庫)

「……あれはやさしい男だよ。似合わない。歌は貴族の嗜みじゃない。全く違う。三十一文字(みそひともじ)には、陳腐な物言いだが、詠み手の命が込められている。濃いんだよ。あの濃さは、普通の人間には毒だ」

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今から千年前.すべての歌は一首の例外もなく幽現界(カクリヨ)に消えた.それから数百年が経ち,歌はぽつぽつと顕明界(ウツシヨ)に戻ってきたが,その間の断絶は大きかった.歌そのもののあり方も,歌に対するひとびとの接し方も根本から変わってしまっていた.
第7回小学館ライトノベル大賞ガガガ大賞受賞作の和歌異能.歌を収集する役目を帯びた歌典寮.すべての歌を収集し終えたと言われる祝園.歌を集めることに病的な執念を燃やす帳ノ宮.幽現界(カクリヨ)から戻り異能を帯びるようになった「歌」をめぐって,各勢力が睨み合う.ただ,異能ではなく(銃とかのほうが簡単で使いやすい),歌それ自体と,歌を取り巻く大昔からの因縁や見栄をキーにして話が動いているのが面白い.簡単にひとがぽんぽん死ぬのはびっくりしたけど,「歌」に込められたものを描いたらこうなった,ということなのかな.正直,ちょっとどころでなく粗い作品ではあるんだけど,個人的には評価したい作品だと思っています.