入間人間 『強くないままニューゲーム Stage1 ―怪獣物語―』 (電撃文庫)

「藤くん、下駄箱に集合ね」
「は?」
敷島が、無理をするように笑う。どれだけ気取っても下唇が震えていた。
「また後で会いましょう」
それが今生の別れの言葉となった。俺の目の前で、車ごと敷島が肉せんべいになって。
その命の灯火が潰えたことで、世界は消灯する。


Continue?


→Yes
 No

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11時50分の教室.昼休み前の学校は,突如現れた怪獣にウエハースのように潰され,俺は死んだ.その次の瞬間,目の前に浮かぶ「Continue?」の文字と謎のカウントダウン.顔を上げると,11時50分の教室に戻っていた.どうやらこの世界が「ゲーム」であることに気づいた俺と敷島さんは,クリアを目指して何度も何度も死んではニューゲームを繰り返す.
時間ループ+脱出ゲーム(+不思議のダンジョン系?),というモチーフの理不尽なゲーム.モチーフはわかりやすいのだけど,状況はそれからは想像できないシュールなもの.繰り返し音もなく現れ,知能があるのかも不明な怪獣(頭頂部に「かち」と書かれた旗が揺れている).目の端に見える謎のアナウンス.なんか,一周回ってほとんどニューウェーブSFになっている.舞台は学校とその周辺だけ.名前のある登場人物は三人だけで,繰り返し繰り返し同じように殺され続ける.なんというか,極狭セカイ系ニューウェーブSF? まあふざけた話ではあるのは間違いないけれど,徹底したルールとコンセプト(世界の根幹や構造は放置して,目の前の現象にのみ注力する)を感じるし楽しい.このコンセプトを曲げないとしたらどういうふうに続けるのか,さらに終わらせるのかがまったくわからない.わくわくするではありませんか.