竹内佑 『キルぐみ』 (ガガガ文庫)

キルぐみ (ガガガ文庫)

キルぐみ (ガガガ文庫)

それはあまりにも巨大だった。美しく薄桃色に光り輝く羽根が隙間なく重ねられた翼が、左右に四対ずつ広げられていた。だが、計八枚の翼には、持ち主がいなかった。
翼の根元に存在するはずの胴体となる部分がそこにはなく、八枚の翼は根元で融合しているだけだった。
巨大な天使の羽のように見えるそれの中心には、肝心の天使が存在していない。

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膝を壊し,陸上を諦めることを余儀なくされた高校生の大垣内歩は,クラスメートの郷田勇気と,学園一の美少女逆木原赤糸,それぞれとひとつずつある約束をする.その晩,赤糸からの電話を取った歩は,気がつくと見知らぬ病院にいた.そこにいたのは緑色で一つ目の折りたたまれたキグルミ.「さあ君。直ちに速やかに迅速に、僕を着てくれ」……
芝居流通センターデス電所の作家・演出家の約1年半ぶりの小説二作目(一作目感想).もともとは6年前に書いた芝居に登場する,架空のアニメだったそうな.どことも知れぬ謎の病院で,夜な夜な学生たちが意思を持つキグルミをまとって殺しあう.「他者とわかりあうこと」をテーマとして強調しながら,やっていることは学園モンスターパニック&デスゲーム.キーとなるのは,ふたつの約束と,『出会い』になるのかな.ひどく迂遠で面倒くさいことをやろうとしているのではないか,という気がするものの,現時点では伏せられた情報が多く(そもそもキグルミがなぜいるのか,なぜ殺し合いをさせるのかも明かされない),表面的な出来事以上のことを読み取るのは難しい.というかほぼ無理ではないか.無駄に深読みしすぎなのかな.続きが出ないことにはニントモカントモなので,とにかく続きを期待してます.