赤月カケヤ 『俺が生きる意味3 水迷宮のデモニアック』 (ガガガ文庫)

俺が生きる意味 3 水迷宮のデモニアック (ガガガ文庫)

俺が生きる意味 3 水迷宮のデモニアック (ガガガ文庫)

「ゲームは私の勝ちだ。君の敗因はなんだかわかるか? ん?」
涙が視界を埋めていく。大切な思い出がぼろぼろと剥がれ落ちていく。半身を失ったような悲しみに、世界が色を失う。
「それはな、ゲームの趣旨を勘違いしたことだ。ゲームは『鬼ごっこ』だと伝えたはず。それなのに君は犯人探しに執着してしまった。『ミステリ』というジャンルは確かに人の興味を引いてやまないものだが、ミステリ要素があるからといって、そのジャンルを『ミステリ』だと決めつけるのは、あまりにも浅はかだ。そうは思わないか? 少年よ」

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葦原第二高校の惨劇から二週間.世間では「なかったこと」になっている事件のトラウマに苦しむ斗和は,水族館で第二の惨劇に遭遇する.斗和の妹の命を賭け,化物と「殺人鬼」との「鬼ごっこ」が開始される.
水族館(モデルはマリンワールド海の中道とのこと)に閉じ込められた人々,それを喰らう化物,生き残りを賭けた鬼ごっこの結末.主人公の目の前で進行するデスゲームが話の中心にはあるんだけど,この作品の世界で言う「日本」(おそらく現代日本とは別文明),くぐった者を殺人鬼にするという「アインズヴァッハの門」,なんらかの事情を掴んでいるらしき宗教団体「神悠言」,ひいてはこの世界は何なのか? という謎掛けが並行して,それでいてまったく別の速度で有機的にぐにぐにと進んでゆく感覚がある.世界観もそうだけど,主人公の行動や思考はどこか「ズレ」てるのよな.作品世界内でも違和感のあるものとされているし,読者としてもなんとなくの違和感が作り出されている.誰であれ容赦なく殺されていくストーリーに,それ以外の頭のいろんな部分を刺激する要素が紛れ込んでいる.ここはこれこれこういう世界である,と説明するのはたぶん簡単だと思うのだけど,紙面に書かれる以上に広い世界が背後にある,ということをしっかりと匂わせてくれる.非常にもどかしく,良いバランスで描いてくれている,と思うのです.参考にこちらもどうぞ→赤月カケヤさんが自らの作品を読み返して述べたこと - Togetter