赤月カケヤ 『俺が生きる意味4 水迷宮のヘリテージ』 (ガガガ文庫)

俺が生きる意味 4 水迷宮のヘリテージ (ガガガ文庫)

俺が生きる意味 4 水迷宮のヘリテージ (ガガガ文庫)

「君は本当に馬鹿だなぁ。今どきそんなおめでたい話を信じているのは君くらいだぞ。嘘さ。嘘に決まってるだろう。そんな理由で殺人鬼になるわけがないじゃないか。たかだか母親を殺された程度だぞ? 君たちは本当に殺人鬼に対する理解がないんだなぁ。殺人には必ずそれに見合った理由があると信じて疑わない。何か勘違いしてないか? 君たちに納得できる理由があるのなら、その時点でそいつは殺人鬼じゃない、普通の人間だ」

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閉じ込められた水族館からの脱出を賭け,正体を明らかにした殺人鬼とのゲームが始まる.三巻(感想)との前後編となる後編.やー,すげー楽しい.異能者のデスゲームから始まったストーリーが,新興宗教やら「現代日本」を創世する神話やらクオリアやら人を構成する(プシュケ)精神(プネウマ)肉体(ソーマ)の三つの座やら,アインズヴァッハの門やらシュレディンガーやらフェルマーやら時かけやら,それを全部混ぜ込んだ物語になるとは思わなかった.複数のレイヤーで描いてはいるけど,つまるところ,ここで描かれる「世界」や「日本」とはいったいなんなのかを追求する物語なんだよなあ.少しずつヒントを出し,デスゲームをやりつつ間接的に世界を明らかにしていく,という作者の姿勢は一貫していると思うんだけど,こんなスケールの話になるとはまったく思ってなかった.これは完結まで追いかけないとあかんと改めて思った次第です.