カミツキレイニー 『憂鬱なヴィランズ4』 (ガガガ文庫)

「ああそうか。神は、僕と君を結び付けるために、こいつを生かしていたのか」

憂鬱なヴィランズ 4 (ガガガ文庫) | カミツキ レイニー, キムラ ダイスケ |本 | 通販 | Amazon

不思議の国のアリス』の読み手,如月シェリーを捕獲した月夜たちの前に現れた,『天女の羽衣』の読み手である夏苅小雨,さらに絵本の作り手のひとりである“イラストレーター”.三つ巴の戦いとなった争いの末,『青髭』の読み手,村瀬一郎が敵方に寝返る.
絵本の「悪役」の能力をめぐるシリーズ四巻.いかにもな学園異能の雰囲気と,夕陽ヶ丘の製薬会社の暗躍がふたつのレイヤーをなしているように見えるのだけど,それがなんか独特の緊張感を出しているのかもなあ.毎度思うことだけど,完成された独自の雰囲気がしっかりあるのが読んでて楽しい.誰に対してもそっけない一郎が,従妹の花詠(6歳)だけにやたら甘くなるというあれこれや,一郎が「正義」を信じなくなるまでのあれこれも,ベタなんだけどかわいくて切なくてああもう,って感じになった.兼亮の主役の座が今までにないレベルで危うい……! ということで良かったです.