大山尚利 『ブラックラジオ』 (ハヤカワ文庫JA)

“誕生とは終わりの始まり。すべての生は死を迎える。あなたに訪れる死という終わりが、どうかおだやかなものでありますように。四月十三日、水曜日。午前零時になりました。ブランニューデスをお伝えします。”

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ある晩,中学一年生の亘がいつものようにラジオとつけると,「ブランニューデス」という聞いたことのない番組が始まった.その放送は,毎日決まった時間,市内の翌日の死亡者を死因,死亡時刻とともに粛々と予言する.亘は死亡事故を見るため,ラジオで予言された場所へと向かう.
「ブランニューデス」に「ジョークナイトデスマッチ」,「デッドボールナイター」といった,不思議なラジオを聞いてしまった人々に奇妙な出来事が訪れる.タイトル通りのブラックな連作短篇集.いかがなものかと思うところもそれなり,というかそこそこあるのだけれど,ノリがわかってくるとだんだん楽しくなる.ラジオDJ風のテキスト,と一言でいうのは簡単なんだけど,音読するにも引っかかりのない,とても良いテキストだと思うのですよね.DJの声で自然に脳内再生できる.そのテキストのリズムが物語に貢献している部分がかなり大きいと思うので,評価するひとしないひとが分かれそうかなーという気がする.
もちろんそれだけではなく,「ブラックサンデー競馬中継」には「やめたげてよう!」という気持ちになり,「ドリーム・フォー・レクイエム」の以外な結末におおーとなる.特にラストはすごく良かった.思わず振り返らずにいられない.『ファースト・サークル』(感想)が好きなひとなら読んでみていいんじゃないかな.