木原浩勝/松田朱夏 『道玄坂怪異 サブライン707』 (すこし不思議文庫)

心の中で、ハチ公に語りかける。
(ねえ、ハチ。待つのって辛いよねぇ)
よく知ってるよ。
(お前は八年待ったんだってね。でも私は十三年待ってるんだ)
ああ――でも、八年待って死んだあと、ここで銅像にされて、代替わりまでして、もう何十年も待ってるんだっけ。


ずっと帰ってこない人を。

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道玄坂で生まれ育った大学生二里とその幼なじみのナナは,ある晩,男に絡まれているレザゴス少女を助ける.少女は,黒い犬に後をつけられていたという.帰り道を送る二人は黒い犬を見つけるが,その姿は路地の裏に消えてしまう.
「すこし不思議文庫」創刊の一冊.道玄坂近辺を舞台にした怪異譚.対象年齢は変わらないと思うのだけど個人的には他の二冊よりもずっと面白かった.渋谷という土地から都市伝説が生まれ,語られ,具現化する.LINEとかTwitterとか,今年2月の大雪時のハチ公の雪像とか,今どきのネタや時事ネタをうまく都市伝説に昇華(?)しているのがさすが,手馴れている感じ.わくわくさせられる.大きなネタは「以下次号」でほとんど投げてしまっているのがやや気に入らないところだけど,たぶん次も買うと思います.