赤城大空 『下ネタという概念が存在しない退屈な世界10』 (ガガガ文庫)

「二年」
僕は顔を上げた。今にもブチ切れて僕のアナルを根性焼きしそうな撫子さんと真っ向から睨み合う。
「二年、長くとも三年で、藻女さんの目論見を完膚なきまでに破壊してみせます。感染者の隔離先である北の大地を含む日本全土で、同時に大規模なデモを引き起こすことで」
僕は断言した。年数に関してはあくまで資産だけど、不破さんと相談した結果だ。そう大きくくずれることはないだろう。

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正しくさえあれば、人に受け入れられ、愛してもらえると思っていた。だがそんなものは、正しさなんてものは、最初から存在しなかったのだ。
――だが。
正しさはなくとも、間違いだけは厳然としてそこにある。
「……わたくしは、間違っていたんですの?」

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とうとう善導課に捕われてしまった綾女と狸吉.《SOX》の助けによって脱出した狸吉は,北の大地にある《健全化矯正北方監獄》,通称《ヘルサウンド》に移送された綾女を救出するための計略を実行する.一方,アンナ先輩は藻女によって「猥褻」に関する「正しい知識」を知らされる.
そろそろクライマックスが近いと思われる10巻.この巻で作品として一皮むけた感がある(下ネタではない).下ネタテロリストとして利用できるものは冷静に利用して,体制崩壊の計画を語る狸吉.「正しい知識」と「正しい認識」を手に入れて,世界と己の歪みを知ったアンナ先輩.正直,シリーズとして中だるみしているところもあったのだけど,こういうものが読めるのであれば文句もない.シリーズを通じて慰み者にされ続けたアンナ先輩に救いが用意されていて,本当に良かったと心から思ったことですよ.アニメは終わったけど,アンナ先輩のその後が気になるひとはここまで追ってきても損はないかもしれませんぜ.