大泉貴 『我がヒーローのための絶対悪(アルケマルス)3』 (ガガガ文庫)

「あれが本当にお前さん方の望んだ、人類の可能性の拡張なのか? 自分の意思に応じて姿形を変える。あんなものは生物じゃない。あれじゃあ、まるで――」
「そう、生物じゃない、あれは一種のシステムよ。私の中に巣食った細胞から生み出された、この社会を刷新するためのシステム」

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――さぁ、始めようか、我が親愛なるヒーロー。


そのときガイムーンは何者かに呼びかけられた。
命の温かさを感じさせない、屍人の声で。


――正義と悪(我ら)の最後の良き闘争を。

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沖名武尊が二代目ヘルヴェノム卿となり,新生リヴァイアサンを結成して半年.月杜市のヒーロー,ガイムーンであり,幼なじみである天羽ミアのため,怪人(オルタ)人間(ネイティブ)を区別なく犠牲にして組織を拡大させてきた武尊は,ガイムーンに最後の闘争を挑む.
幼なじみの少女を「正義のヒーロー」から解放するため,少年は絶対悪となる.「ヒーローはなにと戦うのか?」を追究したという「青春ヒーローピカレスクロマン」,完結編.「ヒーロー」そのものを問いかける作品は,近年ジャンルを問わず増えている印象があるけれど,この作品からはライトノベルでできることをすべて詰め込んで,やり切った印象を受けた.少年と戦闘少女,というある意味でお約束とも言える舞台立てから生まれた,正義と悪の容赦のない物語には,終始ヒリヒリさせられた.個人的には,「言葉」や「物語」へのこだわりを端々に見せるのがちょっと嬉しかったかな.ヒーローものの大傑作だと思うので,少しでもそういうのに引っかかるところがあれば手にとってみていいのではないでしょうか.