ピーター・トライアス/中原尚哉訳 『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

「日本の天皇は霊力を持ってるって話じゃないか。今度のことは全部それだよ。霊力でサンノゼを壊滅させたんだ。そんなのと戦争して勝てるわけなかったんだ」
「ジャップは警告してたぜ。サンノゼ、サウサリート、サクラメントの住民は退避せよ、さもないと天皇が天から火の雨を降らせるって。俺たちは大ぼらだと思って笑い飛ばしてたけど」
「わたしたちの神はなぜ守ってくれなかったんだ?」

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) | ピーター トライアス, 中原 尚哉 |本 | 通販 | Amazon

第二次世界大戦は1948年,日本の落とした3発の新型爆弾がとどめとなって,日本とドイツの勝利に終わる.それから40年後.アメリカ西海岸は日本合衆国(ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン)として統治されていた.帝国陸軍検閲局で大尉を務める石村はある日,特別高等警察の課員である槻野昭子の訪問を受ける.
日本が戦勝国となった改変世界を描いた歴史改変SF.天皇は神として君臨し,兵器は巨大な二足歩行のメカ.朝食は味噌汁とベーコンとかっぱ巻き,ランチは天ぷらバーガー.暗躍するのは特高と憲兵.USJ民は「電卓」と呼ばれる小型コンピュータを携帯してゲームを楽しんでいる(プレイ状況は国家から監視されている).なんというか,事前に聞いてたものから想像した以上にボンクラめいていた.ガチャガチャしているのは良いとして,書きたいことが多すぎるのか,ネタの密度や物語の密度にムラが多い印象が強いかなあ.終戦が描かれる導入は120点だったのだけど,その緊張感が持続しないのがもったいない.楽しかったのは間違いないけど,このテーマだったらもっと傑作になったはずだと思ってしまうんだよな.とりあえず,ニンジャスレイヤーの好きなひととか,ボンクラの自覚があるひとは読んでみるといいさ.