酒井田寛太郎 『ジャナ研の憂鬱な事件簿4』 (ガガガ文庫)

ジャナ研の憂鬱な事件簿 (4) (ガガガ文庫)

ジャナ研の憂鬱な事件簿 (4) (ガガガ文庫)

「ええ、確かに部屋は荒らされています。しかし、なんというか……違和感があるといいますか……おかしな言い方かもしれませんが、空き巣のスタンダードから外れているような気がするのです」

ジャナ研こと海新高校ジャーナリズム研究会の面々は,鎌倉の老人介護施設にボランティアに訪れる.そこで起こった盗難未遂事件が,啓介と真冬の距離に微妙な影を落とすことになる.

真実を探り当てることが本当に正しいことなのか.悩みながら日常の謎に挑み続ける,学園ミステリシリーズ四巻は,「金魚はどこだ?」「スウィート・マイ・ホーム」「ジュリエットの亡霊」の三作を収めた連作短篇集.真実は危ういもの,軽率に触れてはいけないものだとする啓介と,それでも真実はひとが前進するために必要なものだという真冬のスタンスの違いがここではっきりと対立することになる.近づいたり離れたりしていたふたりの,「真実」をめぐるあやふやな綱渡りが,ひとつの壁にぶつかった瞬間が見えたという.どちらかというと辛いことのほうが多いけど,なんか目が離せなくなる青春小説.しっかり負い続けたい.