小山恭平 『我が姫にささぐダーティープレイ2』 (講談社ラノベ文庫)

我が姫にささぐダーティープレイ2 (講談社ラノベ文庫)

我が姫にささぐダーティープレイ2 (講談社ラノベ文庫)

「人の生に意味はない。だけど人は無意味に耐えられない。だから後付けで意味を与えていくんだよ。この敗北にはこんな意味があったんだ。あいつの死にはあんな意味があったんだ。今この瞬間の悲しみは、俺たちの人生は、無意味なんかじゃなかったんだ――解釈で救われようとしてるわけ。たかだか数十年の矮小なる生をわざわざ意味で重くするために、まー物語ること騙ること。ストーリーを求めること。女々しくって弱々しくて、人々しいことこの上ないよ――ほうら、語るって、この上ないほど弱いでしょう? 無意味を恐れて自分から疲れにいってるんだもん」

執事として仕えるお嬢様,ラライ・アッフィールドを「剣姫祭」で優勝させたカイト.次は,芸麗祭の文芸部門での優勝を目標として,ラライのゴーストライターを探すことにする.白羽の矢が立ったのは,「図書館の嘆き姫」の異名を持つ生徒会書記にして小説家,イヴ・アーティカ.

二巻の根っこにあるのは,凡人が生きるには「物語」が必要という普遍的なテーマ.それに対して語られるのは,転生した異世界で売れっ子小説家の気を惹くにはどんな小説がいいか.俺の答えは本格ミステリや! という.うさんくささと説得力のバランスが絶妙すぎる.免疫のない状態から本格ミステリ漬けにされる(そしてあっさりハマる)お嬢様が不憫でならない.あやしくも楽しい異世界転生小説だと思います.