木下古栗 『グローバライズ』 (河出書房新社)

グローバライズ

グローバライズ

「こんにちは、わたくし学生国際協力NGO、ダイナマイトクンニリングスの本宮と申します。ご多用のところ失礼いたします。ただいま少々お時間いただいてもよろしいでしょうか?」

若い力

作者初の短篇集.もともと中篇が多い作家だから,ちょっと食い足りなさはあるけどそんなに違和感はないかな.しかし下品さの密度はなかなか,というか一冊を通してみると過去最高なのではないか.排泄や嘔吐の描写が今までになくリアルで生々しく,ユーモアより先に気持ち悪さがくる.飲食しながら読むのはやめたほうがいい.そこそこハイソで高収入の人々が主役を務める短篇が多く,落ち着いた生活感のあるテキストからの,突然の糞だのゲロだの射精だのの落差がおかしさを生んでいるのだろうか.まあ実際くだらない小説であることは否定しないけど,これを真似できるひとがいるかといったらたぶんいない.
個人的に好きなのは完全に出落ちの「若い力」「フランス人」「夜明け」は木下古栗流の異世界転生ものなのではないか.強制的に異世界転生させられるのは読者のほうなんだけどな.ド直球の「専門性」おまえは何を言っているんだという「道」もすごかった.