三方行成 『流れよわが涙、と孔明は言った』 (ハヤカワ文庫JA)

流れよわが涙、と孔明は言った (ハヤカワ文庫JA)

流れよわが涙、と孔明は言った (ハヤカワ文庫JA)

さあさ、楽しいお話のはじまり始まり。

こいつは世にも珍しい、車とつがうドラゴンの物語だ。

馬謖の首がどうしても斬れない,やたら泣き虫な孔明が試行錯誤するうちに並行宇宙を渡ることになる表題作「流れよわが涙、と孔明は言った」から始まる,作者の第二短篇集.アルキメデスと「走れメロス」を合成したようなトンチキな「走れメデス」,折り紙と食堂をめぐる短篇内短篇「折り紙食堂」.「人は死んだら電柱になる」をテーマにしたアンソロジーからの抜粋「闇」は,闇とそこに潜む何者かに覆われた世界の静けさと不気味さが心に残る.ドラゴンカーセックスをファンタジーに仕立て上げた「竜とダイヤモンド」はこの短篇集のベストかな.ドラゴンの生態を描いていくことで,ドラゴンが自動車とセックスする理由をごく自然に物語に昇華している.まさかこんな風に感心してしんみりしてほんわかするいい話になっているとは.デビュー作『トランスヒューマンガンマ線バースト童話集』よりもバリエーションに富んでおり,個人的に好みの話が多かった.よかったです.



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