小林一星 『シュレディンガーの猫探し3』 (ガガガ文庫)

河童の正体、なんてものは無い。河童は河童だ。人々が生み出した幻想は時に、真実から切り離されて独り歩きし、もはや別物となる。

人々の願いが籠められた、理想である。

化けの皮を剥ぎ、その理想を否定するのならば、覚悟しなければならないだろう。奥に隠されているのは枯れ尾花どころじゃない、見たくなかった醜悪な真実かもしれないのだから。

亡き姉、飛鳥の残した魔導書「シュレディンガーの猫探し」を探して、「迷宮落としの魔女」焔螺と助手の令和は、芥川の故郷である猫又村を訪れる。そこは、妖怪の伝承と因習が数多伝わる、絵に描いたような閉鎖的な田舎の村だった。一行はそこで正義の陰陽師探偵を自称する少女に出会う。

舞台は「伝奇ミステリーの権化のような俗世離れした村」。数々の妖怪伝承、百鬼夜行、よそ者へ冷たい村長と村人たち、妖狐の血を引く土御門の巫女である「正義の陰陽師探偵」。そこには「謎」と「約束」に隠された「物語」があった。謎を迷宮入りへといざなう「迷宮落としの魔女」の物語、第三巻。まったく新しいテーマというわけではないけど、題材がいちいち好きなこともあってちょう面白かった。ドラマを見ていないのだけど、テーマ的には『TRICK』に近いのかな。チョイスされた題材と、作られた「物語」の裏にある真意の組み合わせがとても良いものだった。今回で「ほぼ打ち切り」とのことで、仕方ないけどもっと読みたかったな。お疲れ様でした。