花宮拓夜 『メンヘラが愛妻エプロンに着替えたら』 (スニーカー文庫)

「……多分、あいつは依存先を探しているだけなんだよ。そこに丁度よく僕がいて、たまたま条件が揃っていたから、好意を向けているってだけでさ」

大学生の愛垣晋助は、同級の地雷系女子大生、琴坂静音がパパ活をしていることを知ってしまう。口止め代わりに、静音から「通い妻」契約を持ちかけられる晋助。だが、晋助には地雷系女子への根強いトラウマがあった。

第27回スニーカー大賞銀賞受賞作は、メンヘラ地雷系押しかけ女子との半同棲ラブコメ。基本的にはあらすじ通りの読みやすい小説ではあるのだけど、メンヘラヒロインや主人公を含めた大学生たちの生態を非常によく描けていると思う。各々をかなりソフトかつ慎重にキャラクター化しているのと同時に、話の根っこに生々しい生活感とじめっとした存在感が確実に感じられる。みんな幸せになってほしい、と思える。よい小説でした。