伏見七尾 『獄門撫子此処ニ在リ』 (ガガガ文庫)

――わたしが始めて見たものは、荼毘の炎でありました。

――骸燃やす火の色を、わたしは何故だか覚えてる。

獄卒の血を引き、鬼を喰らって生きる「獄門家」の末裔、獄門撫子。無耶師――いわゆる霊能者たち――からも恐れられる撫子は、鬼退治の依頼を受けて八裂島邸を訪ねる道すがらで、己を恐れぬ謎の女、無花果アマナと出会う。

「怪異を探すことをやめたら……君と会えなくなるだろう。それは、なんというか……」

琥珀の瞳は一瞬、彷徨う。マンホールから、月へ、電柱へ――。

そして、再び撫子を映した。珊瑚珠色の唇が震え、ためらうようにして言葉を紡ぐ。

「イヤ、だと思う……だから、その……」

いつになく拙く感情を述べるアマナを前に、撫子は呆然と立ち尽くしていた。

第17回小学館ライトノベル大賞大賞受賞作。蔵に潜む鬼、トンネル工事の人身御供、取り換え子……。獄卒の末裔である女子高生と、謎めいた雰囲気の女子大生が出会い、コンビを組んで都に現れる鬼を退治する。鬼と怪異、そして激重女のバディものということで、テーマ的にも近しい「裏世界ピクニック」を連想するところもあるかな。「鬼を食う」というのが概念的・霊的な何かでなく、肉を物理的に切り分けてタッパーに保管して調理して食うこと、というのがなかなかの衝撃だった。

ふたりが接近し、変わっていく過程や、現代京都という舞台に大正、昭和の歴史、謎と血を絡めた物語は、ケレン味を含みながら余すところなく丁寧に描かれている。なるほど、帯に言うように王道であり、しかも大賞にふさわしい良い王道だったと思いました。