小川一水 『天冥の標IX ヒトであるヒトとないヒトと PART1』 (ハヤカワ文庫JA)

「俺たちはまだ、大きなことを見落としているよ。それが事態をここまで複雑にしているんだ。ユレイン……君とこういう話ができるのは、はっきり言って心強い。君は誰も知らなかった植民地の実像を、ずっと前から目にしてきた。何か見当はつかないか? この大きな植民地で、今、西暦二八〇四年のこのときに、すべてが始まったみたいな――いや、すべての終わりが始まったみたいな混乱が起きているのは、なぜだろう?」

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カドムたち一行は宇宙船シェパード号に向かって出発する.ホモ・サピエンス《海の一統》(アンチョークス)《恋人たち》(ラバーズ)《救世群》(プラクティス),ダダー,ミスン.サブタイトルにある通り,ここまでで登場したすべてのヒトとヒトでないヒトが集い,おそらく「終わりの始まり」になるのであろう,シリーズ九巻の前篇.結末の予感がありつつも,どことなく語りがユーモラスなのが良い感じ.でこぼこチームのロードムービー・オン・準惑星,みたいな雰囲気がある.さらにここにきて唐突に登場する528億8000万隻(!)の宇宙艦隊や,新たなる宇宙生物に驚く.宇宙ヤバイ,まじでヤバイ,という感じで楽しゅうございました.続きをお待ちしております.