さらに弁当屋からマンションまでの帰り道,黒猫に目の前を横切られた.黒猫は私の1メートル前で立ち止まってこちらをじっと見つめていた.とても毛づやの良い,気品のある猫だった.触ろうと手を伸ばすとするりと駆けて夜に消えていった.
黒猫に目の前を横切られると確か不幸になるんだったっけ.でもあの黒猫は黒い毛皮の上に白い服を着ていた.この場合,不幸がキャンセルされるとか,そういうことはないかしら.いずれにせよ,おっさんの視線で削られた精神力が猫視線で癒やされるような,そんな気分.