- 作者: 一条明
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2012/08/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「リシー、事件です」
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「これを邪魔される方が、よっぽど大事件だよ」バナナチョコチップ・アイスのカップから嫌そうに顔をあげ、フェリシアはこちらを振り向いた。わずかだが吊り上がった巴旦杏 形の目は、疑いようもなく、猫から作られたネコ系の混成体 のものだ。瞳の奥から、険悪な視線がアーニーを睨みつけた。落ち着いた口調だが、声は細く、それほど大きくもない。彼女の静かにふるまう癖は、ほとんど遺伝的なものだ。
人間性を「連続する自己同一性」に置き,
覆面作家・一条明のデビュー第二作.「人間化」した猫や犬などの動物たちに加え,脳だけ「混成体」になった猫やら「天然物」の人間やらが営む社会を舞台にしたSFミステリ.基本的には日常の謎.物語の根幹にある〈主観性神学〉はすごい発明だなあ.かなりの密度で情報がつめ込まれているのだけど,テキストや話運びが非常にしゃれていて,するっと読めるし飲み込みやすい.宗教やイデオロギー,大きく変化した社会倫理のひとつひとつにもはっとさせられること多し.そうか,ヒトの姿になった猫でも猫の姿をした猫に欲情するのか,とか,細かいところにも気が配られている.楽しかった.覆面の内側はかなりの実力作家であることは間違いありませんぜ.