さがら総 『変態王子と笑わない猫。10』 (MF文庫J)

「いいか、よく聞け。いろいろ考えてくれたようだけどよ――必要なのは騙し合いじゃない。話し合いだ。きちんと話をするんだ。向こうも孫を慮っているだけだ。悪じゃない。安易に敵を見つけようとするな。倒してお仕着せの解決を持ってこようとするな」
ツカサさんは、どこか悲しそうに座敷のほうに視線を投げた。
この世界に本当に悪いやつなんていないんだから
その言葉は、きっと正しい。圧倒的に正しい。正しすぎるほどに正しい。

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猫神の力による時間ループの果てに,10年前の世界に,10年前,6歳の身体でたどり着いた横寺くん.10年前の鋼鉄さんと月子ちゃんがいて,姉妹の母親,ツカサさんが生きている世界で,未来の絶望を回避するべく行動する小学生の横寺くんだったが,自体はすでに手遅れになりつつあった.
10年前の世界を工藤新一状態で追体験するロリショタ回.横寺くんのどこまでいっても信用できない語りは相変わらず冴えているのだけど,お話としてはおとなしいというか,冗長な印象があるかな.そこはさておき,歴史改変におけるバタフライ・エフェクトの説明がとてもよかった.非常に簡潔で,物語に則した説明から,作者の知性を感じる.話をぶった切りにするヒキの強いラストもあり,続きが気になるところ.