浦土之混乱 『スタンピード!!』 (講談社ラノベ文庫)

スタンピード!! (講談社ラノベ文庫)

スタンピード!! (講談社ラノベ文庫)

「この世にヒーローが居ないってんなら、俺がヒーローになってやる」

茨城県土浦市.かつてこの街にはヒーローがいた.それから十数年前が経った20XX年.市中の銀行が過激派武装集団新攘夷会に占拠される.為す術のない暴力の前に現れたのは,ヒーローの志を継ぐ三人の若者だった.

ヒーローの去った街に現れた新しいヒーローは,正義の警察官,義賊のギャングスタ,不幸属性の一般人の三人だった.第7回講談社ラノベ文庫新人賞佳作受賞作.土浦を舞台にした,成田良悟を思わせるようなスピーディな群像劇.それぞれのキャラクターは良いと思うし,ストーリーの大筋は好みなんだけど,いまいち乗り切れなかった.思うに,「ヒーロー」の描き方というかけれん味が弱いのかなあ.ここにいない初代「ヒーロー」の存在感がどうも薄いがために,主人公三人の行動原理が薄くなり,黒幕が小物にしか見えないし,真の黒幕は目的がさっぱりわからない.結果としてカタルシスも今ひとつ,という.