長嶋有 『エロマンガ島の三人 長嶋有異色作品集』 (エンターブレイン)

エロマンガ島の三人 長嶋有異色作品集

エロマンガ島の三人 長嶋有異色作品集

ブルボン小林のコラムはちょくちょく読んでたけど長嶋有ははじめて読んだ.中短編5編.
表題作エロマンガ島の三人」(原案 バカタール加藤).あー,そういやファミ通でやってたなあこんな企画.モデルになった年代と掲載誌(オトナファミ)から考えても私の年代がターゲットにされているのは間違いない.作中では否定されてるけど楽園幻想小説の色が濃かった.現実と楽園が同じ世界にあることのやりきれなさ,そして頼もしさとか,なんかそんなない交ぜの感情.終始うぜぇ野郎として描かれた久保田が最終的にいちばん「自分」を持っていた,ってのがまたなんとも.「現実」の強いこと頼もしいこと.
「アルバトロスの夜」.「補遺」にあるように,エンターテイメント色が濃くて異色作品集の中でもいちばんの異色作,でもいちばん素直に楽しめた.地に足着いたカップルの対話とシュールな背景のミスマッチがどことなく「東海道戦争」なんかの頃の筒井康隆っぽい.こういうの大好物っすよ.これと「女神の石」はAnima Solarisで読めるので興味あるかたは是非.
青色LED

さっきのあの信号機の光こそが「二十一世紀」だ。なんとなくそう思った。

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現実から楽園へ逃げ,そして帰ってきた男のその後.「エロマンガ島の三人」から地続きの寂しさが漂っていてやるせなさも最上.それでいて,「エロマンガ島の三人」とセットで読むと落ち着くべき場所に落ち着いた感があって腑に落ちた.