ビル・コズビー/常盤新平訳 『タイム・フライズ』 (ゲイン)

タイム・フライズ

タイム・フライズ

「テレビのトークショーでつねに高視聴率を誇ってき」たビル・コズビー.50 歳を迎えた彼が自分の老いについて語ったエッセイ.いやまあ私はこの本ではじめて名前を知ってあとがきで何者かを知ったわけですが.訳者も訳者あとがきで「彼のテレビを見たことはありません」と書いてるのでたいした問題でもないでしょう.
内容は,自分がいかに老いたか,老いた自分がいかに情けないかを自虐的に書いただけ.若い頃の自分はとても溌剌としており,自分がこんなに衰えるなんて想像も出来なかった.若いやつらと話が合わない.健康のための粗食は不味くて食った気がしない.などなど.あまりに率直すぎる.中身なんかあったもんじゃねぇ.まあテレビ文化人のエッセイというと中身はなくとも説教臭い・教訓めいているというイメージがあったので中身が無くとも本音をぶっちゃけている本書は逆に好感度は高い.
自虐の嵐をアメリカ人らしいユーモアで包みつつも簡潔なテキストで読みやすく,それでいて老化への本気の嘆きがたまに顔を覗かせているのがゾッとする.流石にやりすぎたと思ったのか,序文(どこかの医者(?)が書いたもの)で「加齢もそんなに悪いことばかりではないですよ」とフォローしてるけど,本文で台無し.まったく歳はとりたくねぇなあ.