一柳凪 『みすてぃっく・あい』 (ガガガ文庫)

みすてぃっく・あい(ガガガ文庫 い 3-1)

みすてぃっく・あい(ガガガ文庫 い 3-1)

第 1 回小学館ライトノベル大賞・期待賞受賞作.4 人の少女のみが残った冬休みの女子寮での奇妙な一幕.狭い舞台と最低限の登場人物で組み立てられた物語は,自主制作の映画とか,小劇団の演劇とか,そういったものに共通するものをどこか持っていたように思う.「一面に積もった雪」,「見わたすかぎりの平面」といったビジュアルイメージからくるものか,どこともリンクしない*1切り取られた極小の世界のイメージが強く,物語自体が淡々としていることもあって終始一貫寂しいイメージが付きまとっていた.この雰囲気は嫌いじゃない.
とまあ色々書いてはみたものの,「幻想百合ミステリー」を標榜してる割には百合描写がいまいちだし,話自体ミステリでは無いし,荒っぽい部分も多々.こねくりまわした苦労の跡の見えるテキストや唐突な終盤にはちょっと「えー」と思わなくもなかった.このあたり,あくまで個人的感想だけど,佐藤友哉中村九郎をはじめて読んだときと同じもにょり感を感じた.……まあ私はこの 2 人はあまり好きになれなかったのだけど.
ともあれ作を重ねれば大化けしそうな雰囲気はあると思う.「愉快なエンターテイメント作品を馬車馬のごとく生産してゆきたい」らしいので,どうなるか期待してみていきたいかな,と.

*1:実際は違うのだけど