小川一水 『時砂の王』 (ハヤカワ文庫JA)

時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)

時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)

小川一水初の時間 SF.時間的空間的スケールの大きな話を非常にコンパクトに,それでいて過不足なく読ませる力のある一冊.救いの見えない日々のなか,オーヴィルの疲弊と絶望と過去(未来)への想いが全編を重く包み込んでいるのが息苦しい.読み進めるにつれてその絶望の理由がひとつひとつ明かされてゆくのもまた苦しさがのしかかってくるようで.ET との戦況の変化といった大きな流れと並行して描かれる人間や知性体の個性ややりとりも熱くロマンティックで,特にカッティ・サークと卑弥呼の女の争いが,そして卑弥呼の格好良いこと.面白かったです.
あとこれテレビゲーム化したら面白くならないかなあ,と読みながら思った.地球側と ET のパワーバランスと駆け引きがいま遊んでいるビデオトープこと『勇者のくせになまいきだ。』をちょっと連想させるものだったので.