川崎康宏 『ガッツ&ブラッド 蒸気帝国騒動記』 (GA文庫)

スチームパンク世界で繰り広げられるドタバタコメディ.『ガジェット・ポップ 〜蒸気帝国騒動記〜』の 2 年越しの続編.……であることを半分近く読むまで気づかなかった.中盤に差し掛かったあたりで過去の事件がどうのこうのと唐突に出てきたのであれと思ってよく確かめたら続編だったという.シリーズものはタイトルなりサブタイなりに巻数を入れてほしいと思ってるのは私だけじゃないよねぇ.マリみてとかさ.私がマリみてを読まないのは次にどれ読めばいいのか分かんなくなってしまったからという理由があるのです.
閑話休題.内容とは関係ないとこでケチつけたけどこれは面白かった.次々に起こる事件に誤解が誤解を呼ぶ物語構造は複雑すぎず単純すぎず,スピーディにぐいぐいと牽引される感がある.頻繁に使われるムチャクチャな力技にも,説得力を持たせるだけの描写が最低限のテキストでなされていた.まあオチまで含めてひとことで表現するならドリフなんだけどね.大山鳴動しての脱力もののラストは私はかなり好き.スチームパンク的な世界観描写は前作でやったのか説明は少なかったけど把握できたし,かえってバランスが良かったかも.川崎康宏(今作からペンネームを川崎→川恕Wに変えたそうな.……こっちね)は初読だったけどさすがの実績を感じた.一巻を先に読むべきだったかもしれないけど単体でも十分にイケた.