伊崎喬助 『スチームヘヴン・フリークス2』 (ガガガ文庫)

スチームヘヴン・フリークス 2 (ガガガ文庫)

スチームヘヴン・フリークス 2 (ガガガ文庫)

「ごめんね、パツィ。あたしはヒーロー気取るつもりも資格もないけどさ、やっぱこういうの見過ごしちゃダメだと思うんだわ」
手を振り払い、即席のバリケードをひょいと乗り越える。
「正義とかそんなご立派なもんじゃなく、助けられるかもしれない人間を見捨ててあたしが納得できるかどうかっていう個人的な……なんつーの、感傷? みたいなさ。じゃね、パツィ。また会えるといいね」

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「あんたとアシュリーは、本物のヒーローだ。公私混同なんてしやしない。でも、あたしは違う。大切なものが多すぎて、ヒーローにはなれない」

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機械と蒸気の街,アメリカ合衆国ペンシルベニア州ビザーバーグ.ふとしたことから喧嘩をしたバスカーズのニコラスとザジ.一方,バスカーズと犬猿の仲であるトライデントもちょっとした行き違いを抱えていた.そんな折,警察からの依頼により,ニコラスとトライデントのウンディーネが揃って要人警護にあたることになる.
アメリカのある都市を舞台にしたスチームパンク第二巻.一巻(感想)に引き続きちょう楽しい.蒸気の街をヒーローやヴィラン,フリークスが独自のチームを作って暴れまわったり,ジョーカーみたいな白塗りの男が出てきたり,ヒーローとしての覚悟が描かれたり,ストーリーも盛りだくさんながら非常によくまとまっているというか,この密度をよく250ページでまとめあげたなと感心した.依頼がジョージ・ハーバートの警護だったり,ジョシュア・ノートンから爵位を賜ったという狂人が敵チームにいたり,いかにもスチームパンクらしい洒落たハッタリも嬉しい.三人でなければ完全ではない,というセリフとともに結集したトライデントのシーンはちょうかっこいいし胸が熱くなる.アメコミと日本のヒーローもののいいところを,とてもうまく拾っていると思うんだ.一巻を読んだときも思ったけど,やはり日本のミエヴィルと言っていいのではないか.